「50mmレンズは人の視界に近いから、初心者におすすめ」
カメラを始める際、そんな言葉をどこかで耳にしたことはありませんか?
私もその言葉を信じて、最初の相棒に EF50mm F1.8 STM を選びました 。 意気揚々と実家の愛犬(15歳になる柴犬のおばあちゃんです)を撮りに行った私を待っていたのは、予想外の「絶望」でした。
「単焦点レンズ特有の、あのとろけるようなボケ。これでうちの子を撮れば、まるで雑誌の1ページみたいになるはず……!」
そんな淡い期待は、シャッターを切るまでもなく打ち砕かれました。
1. 最初の違和感:リードを持つ手が「壁」になる
愛犬との散歩。「一眼レフという新しい相棒で、この子の今の姿を最高に綺麗に残してあげたい」。そんな優しい気持ちでカメラを構えた瞬間に、事件は起きました。
「……近すぎる。全身がまったく収まらない!」

足元を歩く愛犬を撮ろうとすると、ファインダーに映るのは顔のアップか、身体の一部だけ。
「じゃあ、一歩下がればいいじゃないか」と思われるかもしれません。でも、現実はそう甘くありませんでした。
なぜなら、私の左手には「リード」があるからです 。 リードの届く範囲でしか動けない私にとって、これ以上距離をとることは物理的に不可能。 本当は、撮った写真を元に「自作アクリルスタンド」を作ろうと目論んでいたので、どうしても全身が収まった写真が欲しかったのです。
しかし、リードを握ったままでは、横を向いた彼女の姿は画面からはみ出し、縦に構えても頭か脚が切れてしまう。
「うちの子はこんなに可愛いのに、私の腕(機材)が追いつかない」。
おばあちゃん犬の穏やかな表情を前に、申し訳なさすら感じていました。
2. ベンチでの攻防:あと一歩が遠い「80mm」の壁
散歩の途中、公園のベンチに愛犬を座らせて、少し落ち着いた写真を撮ろうと試みました。
私のすぐ隣で佇む愛犬。「今だ!」とシャッターを切ろうとしましたが、やはり画面に収まるのは顔の周辺だけ。
普通の柴犬サイズの彼女を、ちょうどいい画角で全身収めるためには、実際には2〜3mほどの距離が必要でした。

結局、リードをベンチや持ってきたカートにしっかり括り付け、自分だけが2メートル以上離れた木の根本まで下がって、ようやく全身を写すことができました。

ここでようやく、私は「ある事実」に気づきます。
「50mmって、こんなに望遠だったっけ……?」
3. 初心者がハマる焦点距離「1.6倍換算」の罠
調べてわかったのは、私の愛機 EOS Kiss X7 のようなセンサーサイズがAPS-Cの一眼レフカメラが引き起こすマジックでした。 難しい理屈はさておき、結論から言うと、Kiss X7に50mmのレンズを付けると、実際には 80mm相当の望遠レンズ として動いてしまうのです 。
- 50mm = 人の視界に近い(フルサイズカメラの場合)
- 80mm = 「よし、あそこの看板をアップで撮るぞ」という時の距離感

ネットの記事などで「1.6倍換算」という言葉は目にしていましたが、「ふーん、そうなんだ」程度にしか思っていませんでした。しかし、実際に「リード」という制約がある中で撮影して、初めてその数字の重みを痛感しました。
初心者の私は、知らず知らずのうちに「ちょっと遠くを撮るための装備」で、足元の愛犬を撮ろうとしていたのでした。これでは全身が入らないのも当然です。
4. 救世主は、薄さ2cmの「パンケーキ」レンズ
「せっかく買ったカメラなのに、このままじゃ散歩の写真すらまともに撮れない……」。
そんな焦りの中で見つけたのが、もう一つのレンズでした。 薄さわずか2cm。まるでパンケーキのような見た目をした、 EF-S 24mm F2.8 STM 。
「このレンズなら、1.6倍しても約38mm。リードを握ったままでも、彼女のすべてを写せるかもしれない」。
このレンズを手に入れたことで、私のカメラライフは劇的な変化を迎えることになります。そしてその変化は、思いもよらない「スピード感」で私を実戦の舞台へと連れ出しました。
次回、 「実戦投入!パンケーキレンズを手に、初めての撮影会へ」 。
果たして、この薄いレンズは私のピンチを救ってくれるのでしょうか?
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