前回の「近代麻雀水着祭(キンマー)」での激闘から帰宅し、膨大なデータを取り込んでいた時のこと。 13年前の相棒・EOS Kiss X7と望遠ズームでなんとか食らいつき、「これだ!」と思える奇跡の1枚を見つけた私は、興奮冷めやらぬままLightroomを開きました。
「屋外の強い日差しで、背景が少し白飛び気味だな。よし、ハイライトを下げよう」 パラメーターを左へ大きく動かし、背景のディテールが戻ってきたことに満足した私は、そのまま現像を完了させました。
しかし、数日経って冷静になり、改めてその写真を見返した時……強烈な「違和感」に襲われたのです。
1. 違和感の正体:初心者が陥る「ハイライトマイナス」の罠

「……なんか、全体的に暗くてどんよりしていないか?」 これが、翌日写真を見た時の率直な感想でした。
現像前のRAWデータと見比べて、何が起きたのかをエンジニア視点で分析してみました。 原因は明確です。「背景の明るさを抑えるために、露光量とハイライト(明るい部分)の数値をマイナスに振り過ぎたこと」でした。
Lightroomの基本パラメーター(基本補正)は、写真「全体」に影響を与えます。 背景の白飛びを抑えようとハイライトを極端に下げた結果、水着ポートレートで最も重要な「モデルさんの肌の明るさやツヤ感」まで一緒に削ぎ落としてしまっていたのです。 現場での「現像ハイ」状態になっていた私は、背景ばかりに気を取られ、主役であるはずの被写体が暗く沈んでいることに気づけていませんでした。
2. 再構築のロジック:まずは「全体」の露光量を上げる
この失敗を踏まえ、私は一度すべてのパラメーターをリセットし、ゼロから論理的に現像をやり直すことにしました。
まず考えるべきは、「この写真で一番見せたいものは何か?」ということです。 背景の空やセットではなく、当然「モデルさんの表情と肌」です。
そこで、背景の白飛びは一旦無視して、「被写体の肌が一番綺麗に見える明るさ」を基準に、全体の『露光量』を思い切ってプラスに持ち上げました。 するとどうでしょう。肌に透明感が戻り、現場で私の目に映っていた「夏の眩しい空気感」が蘇ってきました。
しかし、このままでは当初の悩みだった「背景の白飛び」が気になります。ここでいよいよ、Lightroomの「魔法」を使う時が来ました。
3. 救世主「被写体マスク」による部分補正
全体の明るさを整えた後、背景だけを抑えるために使ったのが『被写体マスク』という機能です。
これはAIが写真の中から自動的に「人(被写体)」を認識し、そこだけ、あるいは「そこ以外(背景)」だけに別のパラメーターを適用できるというチート級の機能です。
- 「被写体を選択」でモデルさんだけをマスクする。
- そのマスクを「反転」させ、「背景だけ」が選択された状態にする。
- 背景のマスクに対してだけ、ハイライトや露光量を下げてディテールを復活させる。
- 逆に「被写体だけ」のマスクを作り、少しだけシャドウを持ち上げて顔の暗がりを補正する。
「全体」ではなく「部分(レイヤー)」で分けて数値をコントロールする。この思考プロセスを取り入れたことで、現像の精度が劇的に跳ね上がりました。
4. まとめ:現像は「引き算」と「切り分け」

いかがでしょうか。最初に現像した「ハイライトを下げすぎて暗くなった写真」と比べると、被写体の存在感がまるで違うはずです。
初心者のうちは、どうしても「とりあえずスライダーを極端に動かす」という足し算の現像になりがちです。しかし、本当に大切なのは「基準(被写体)を決めて全体のベースを作り、気になる部分はマスクで切り分けて処理する」というロジカルなアプローチでした。
13年前の古いカメラが叩き出したデータでも、現像のロジックさえアップデートできれば、まだまだ戦える。 キンマーの熱い夏は、私にまた一つ、強力な武器を授けてくれました。
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