前回の撮影実験では、被写体と背景の距離を変えながら、背景のボケ方がどれくらい変わるのかを試しました。
背景を被写体から離していくと、同じような撮影条件でも背景が大きくぼけていく。
実際に撮り比べてみると、「背景をぼかしたいならF値を小さくする」というだけではなく、被写体と背景の距離もかなり大事だということが分かりました。
背景との距離を変えてボケ方を比較した実験はこちら → 「背景距離とボケの比較実験」
では、逆はどうでしょうか。
背景を大きくぼかすのではなく、できるだけ手前から奥まで見えるように撮りたい場合はどうすればいいのか。
今回は近所を散歩しながら、それを試してみます。
今回は「パンフォーカスっぽい」写真を狙ってみる
写真について調べていると、「パンフォーカス」という言葉を見かけます。
ざっくり言えば、写真の一部分だけではなく、手前から奥まで広い範囲にピントが合って見える状態のことです。
ただ、今回は厳密な意味でのパンフォーカスを作ることを目標にはしません。
過焦点距離をきっちり計算して、画面内のすべてを被写界深度の中へ入れる、というところまでやると、今の自分には少し話が難しくなりすぎます。
今回やってみたいのは、もっと単純です。
手前だけにピントが合って背景が大きくぼける写真ではなく、手前から奥まで比較的シャープに見える写真を撮ってみたい。
そんな「パンフォーカスっぽい」見え方を目指してみます。
今回使うのはEF-S24mm F2.8 STM
今回使用したレンズは、
Canon EF-S24mm F2.8 STM
です。
EOS Kiss X7では少し広めの画角で撮れる単焦点レンズで、普段の散歩撮影でもよく使っています。
今回このレンズを選んだ理由は、手前の物だけではなく、その後ろの道路や建物なども同時に画面へ入れやすいからです。
また、一般的には焦点距離が短いほど被写界深度を広く取りやすいため、今回のような「できるだけ全体を見せたい」という実験にも向いていそうです。
もちろん、24mmを使えば自動的にパンフォーカスになるわけではありません。
F値、被写体との距離、ピントを合わせる位置なども関係してきます。
今回はそのあたりを、実際に撮りながら確認してみます。
まずはF8を基準に歩いてみる
今回の基本設定は次のようにしました。
| 項目 | 設定 |
|---|---|
| カメラ | Canon EOS Kiss X7 |
| レンズ | Canon EF-S24mm F2.8 STM |
| 焦点距離 | 24mm |
| 撮影モード | Mモードを基本 |
| 基本F値 | F8 |
| ISO | 比較撮影ではISO100固定 |
| 撮影方法 | 手持ち |
| 記録 | RAW+JPEG |
最初はISO AUTOで撮っていましたが、比較撮影ではISO100に固定しました。
理由は、F値やピント位置による解像感の違いを見たかったためです。
ISOを上げるとノイズが増え、その影響で細部の見え方も変わってしまいます。
今回は、ノイズという別の要素をできるだけ減らした状態で、F値やピント位置による違いを見てみることにしました。
そのうえで、F8を基準にして近所を歩きながら、
「手前・中景・奥が一枚の中に入る場所」
を探してみました。
今回の目的では、有名な撮影スポットである必要はありません。
道路、歩道、柵、建物、木。
普段歩いている場所でも、奥行きを意識して見ると実験に使えそうな場所はあります。
手前から奥まで続く場所を見つけた
歩いている途中で見つけたのが、この場所です。

道路の横に、白いポールと緑色の柵が手前から奥まで並んでいます。
さらにその先には、
- 白い車
- 住宅
- 木々
があります。
今回の実験にはかなり都合のいい場所でした。
白いポールが手前から奥まで連続しているので、どのあたりまでシャープに見えているのかを確認しやすいからです。
ここでF値とピント位置を変えながら撮ってみます。
F2.8・F8・F11で撮り比べてみる
まずはピント位置を大きく変えずに、
- F2.8
- F8
- F11
で撮り比べました。
比較に使った写真はいずれも24mm・ISO100です。
F2.8

まずは開放のF2.8。
手前から奥まで物が並んでいるので、どこがシャープで、どこが少し柔らかくなっているのかが分かりやすくなっています。
特に手前側を見ると、奥側と同じようにシャープに見えているわけではありません。
F8

次にF8。
F2.8と比べると、写真全体としてかなり広い範囲が見えやすくなりました。
手前のポール、中景に並ぶポール、その先の車や住宅まで、それぞれの形が比較的しっかり残っています。
今回狙っていた「パンフォーカスっぽい」という意味では、F8の時点でかなりそれらしい見え方になっているように感じます。
F11

最後にF11。
理屈の上では、F8よりもさらに被写界深度は広がります。
ただ、写真を普通の大きさで見たときには、F8から劇的に変わったという印象はありませんでした。
今回の構図と24mmという焦点距離では、F8の時点ですでにかなり広い範囲がシャープに見えていたため、F11との差が目立ちにくかったのかもしれません。
F8とF11の差は、思ったより大きくなかった
撮影前は、
F2.8 → F8 → F11
と絞っていけば、手前から奥までの見え方がかなり大きく変わるのではないかと思っていました。
実際に比べると、F2.8とF8の違いは比較的分かりやすいです。
一方で、
F8とF11の違いは思ったほど大きくありませんでした。
もちろん拡大して細かく見れば違いはあります。
ただ、ブログに掲載する程度のサイズで写真全体を見ると、F8でもかなり「全体が見えている」ように感じます。
「もっと絞れば、もっと分かりやすく変わる」と思っていたので、これは実際に撮ってみて初めて分かった部分でした。
F11ではシャッタースピードが1/30秒まで落ちた
今回の比較では、
- F2.8:1/500秒
- F8:1/60秒
- F11:1/30秒
となっています。
ISO100で条件を揃えていたため、絞るほどシャッタースピードが落ちました。
F11では1/30秒です。
今回は静止している風景を撮っているので撮影自体はできましたが、手持ちでは手ブレが気になりやすい速度です。
もちろん、ISOを少し上げれば、F11でももう少しシャッタースピードを確保できます。
今回気になったのは、そのさらに先です。
さらにF16まで絞るなら、今回の明るさではISOも上げる必要があります。
ただ、EOS Kiss X7では高ISOノイズが気になりますし、F16まで絞れば回折の影響も考える必要があります。
手前から奥までシャープに見せたいのに、別の要因で細部が見えにくくなっては本末転倒です。
曇天下の手持ち撮影で、低ISOを保ちながらさらに絞っていこうとすると、EOS Kiss X7という機材の限界も意識する必要がありそうです。
今回は「手前から奥までどこまでシャープに見えるか」を確かめたかったので、無理にISOを上げてF16まで試すよりも、ISO100で条件を揃えて比較することを優先しました。
今度はピント位置を変えてみる
次に、F値だけではなくピント位置も変えてみました。
今回の撮影では、撮影順と実際の写真上のシャープさを確認すると、
前半は奥側、後半は中景側
にピントを置いていたように見えます。
撮影時の記憶では、前半は奥の白い車付近、後半は手前から数本目の白いポール付近に合わせていました。
ただし、ここでは記憶だけではなく、実際の写真上でどの距離がシャープに見えるかも確認しています。


同じF8でも、ピントを置いた場所によって、シャープに見える範囲の中心が変わっているように見えます。
背景まで見せたいなら、奥に合わせればいいわけではなさそう
最初は、
背景まで見せたいなら、奥にピントを合わせた方がいいのでは?
とも考えました。
でも実際に撮ってみると、奥側を基準にすると手前側が甘くなりやすくなります。
今回のように、
- 手前にも物がある
- 中景にも物がある
- さらに奥にも景色がある
という構図では、奥だけを基準にするよりも、少し手前の中景へピントを置いた方が、写真全体としてバランスよくシャープに見えやすいように感じました。
これが今回、F値の違い以上に面白かったところです。
「パンフォーカスっぽい」はF値だけでは決まらなかった
今回の実験を始める前は、
「F値を絞れば、パンフォーカスっぽくなる」
というイメージをかなり強く持っていました。
もちろん、F値を大きくすれば被写界深度は広くなります。
でも、実際に撮ってみると、それだけではありませんでした。
今回の写真では、
- 24mmという焦点距離
- F値
- ピント位置
- 手前の物までの距離
- 中景と遠景の配置
が組み合わさって、全体の見え方が決まっています。
特に今回のように24mmで撮る場合、F8の時点でもかなり広い範囲がシャープに見えました。
一方で、今回のような撮り方でも、カメラのすぐ近くにある物まで何でも同じようにシャープになるわけではなさそうです。
背景は「ぼかす」だけではなく「見せる」こともできる
前回の背景距離実験では、
背景を離すことで、より大きくぼかす
方向を試しました。
今回は逆に、
背景までなるべく見えるようにする
方向を試しました。
この2つを続けて試したことで、
背景をどう写すかは、F値だけでなく距離やピント位置も含めて考えるもの
だという感覚が少し分かってきました。
背景を大きくぼかして主役を目立たせたい写真もあれば、背景まで見せて「どこで撮ったのか」を伝えたい写真もあります。
どちらが正しいという話ではありません。
撮りたい写真に合わせて選べるようになることが大事なのだと思います。
人物撮影でも「背景をどこまで見せるか」を考えてみたい
今回試した「パンフォーカスっぽい」撮り方を、そのまま人物撮影に使えるとは思っていません。
屋外の撮影会では、
- 人物までの距離
- 背景までの距離
- 使用する焦点距離
- 人物の動き
- 明るさ
- シャッタースピード
など、今回の散歩撮影とは条件がかなり違います。
特に望遠側を使えば、F値を絞っていても背景が大きくぼけることがあります。
それでも、
「背景をぼかすのか、それともある程度残すのか」
という考え方自体は、人物撮影でも使えそうです。
今回の散歩で覚えたことを、今後の撮影でも少しずつ試してみたいと思います。
今回分かったこと
今回の実験では、24mm・F8の時点で思っていた以上に広い範囲がシャープに見えました。
F11との差は大きくなく、その一方でシャッタースピードは1/30秒まで低下しました。
また、F値だけでなく、どこにピントを置くかでも見え方が変わりました。
「背景まで見せたいなら、とにかく絞って奥にピントを合わせればいい」というほど単純ではなく、焦点距離や距離、ピント位置まで含めて考える必要がありそうです。
まだ厳密な意味でパンフォーカスを自在に作れるわけではありません。
それでも、背景をぼかすだけではなく、背景まで見せる方向にも撮り方を変えられる。
その感覚を少しつかめた撮影実験になりました。
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