これまでブログでは、F値や焦点距離、被写体と背景の距離を変えながら、背景のボケ方がどう変わるのかを何度か試してきました。
そうした撮影実験を続けるうちに、「背景をぼかしたいなら、とにかくF値を小さくすればいい」というほど単純ではないことも少しずつ分かってきました。
では、撮影実験で考えてきたF値・背景距離・焦点距離の使い分けは、実際の人物撮影でも使えるのか。
9月29日に参加した近代麻雀水着祭では、これまでの撮影実験で考えてきたことをもとに、F5.6を基本としながら、背景との距離や焦点距離を見てF8も使ってみることにしました。
事前に考えていた撮影方法については、こちらの記事でまとめています。
近代麻雀水着祭でどう撮る?焦点距離とF値から撮影計画を考えてみた
今回は、その計画を実際の人物撮影へ持ち込んでみて、どうだったのかを振り返ります。
実際の写真を見返してみると、F5.6とF8の違い以上に気になったのは、焦点距離や背景との位置関係でした。
実際の撮影はF5.6+1/500秒が中心になった
今回使用した機材は、Canon EOS Kiss X7とEF-S55-250mm F4-5.6 IS STMです。
撮影したRAWデータは6,067枚。EXIFを集計すると、事前に考えていた撮影方法がかなりそのまま数字に出ていました。
| 項目 | 主な結果 |
|---|---|
| 撮影枚数 | 6,067枚 |
| F値 | F5.6:5,479枚(90.3%)/F8:584枚(9.6%) |
| シャッタースピード | 1/500秒:5,060枚(83.4%) |
| 焦点距離 | 55〜134mm:4,830枚(79.6%) |
F5.6が9割を占め、シャッタースピードも1/500秒が8割以上。焦点距離は55〜134mmに約8割が集中しました。
F4はわずか4枚で、事前に候補としていたF6.3やF9.5は使っていません。つまり今回は、実質的にF5.6とF8の2種類で撮影していました。
また、55-250mmという望遠ズームを使っていても、200〜250mmで撮ったのは246枚、全体の4.1%です。
撮影中は事前に決めたことを細かく思い出していたわけではありません。それでも数字を見ると、
F5.6+1/500秒を基本にして、55〜134mmあたりを中心に撮る
という形に自然と落ち着いていました。
背景が遠い場面では、F8でも人物と背景を分離できた
今回、F8を使った理由の一つが背景との距離でした。
たとえば広いプールが後ろにあるような場所では、
「ここは後ろが開けているから、焦点距離を長めにすればF8でも背景はある程度ぼけるはず」
と考えて撮っています。
実際の写真を確認すると、135mm・F8・1/500秒・ISO800で撮った写真では、背景に写った人物や傘、植栽がぼけて、主役との精細さに違いが出ていました。
100mm・F8・1/500秒・ISO800で撮った写真でも、人物に対して奥にある柵や樹木が柔らかくなっています。
少なくとも今回確認した作例では、背景まで距離があり、100〜135mm程度の焦点距離を使った場面なら、F8でも人物と背景を分離できていました。
これは撮影前に考えていたことと、おおむね一致しています。
ただし、背景がぼけていれば何でも気にならなくなるわけではありません。
鮮やかな色の傘などは、ぼけていても意外と目に入りました。
人物を目立たせるには、ボケの大きさだけでなく、背景にどんな色や形のものがあるのかまで見る必要がありそうです。
このあたりは、屋外で焦点距離による背景ボケを試した記事でも検証しています。
今回確認したF5.6・55mm、F5.6・100mm、F8・55mm、F8・100mmの4パターンで撮影した写真は、Xに掲載しています。
※リンク先の写真はLightroomで通常の現像を行っています。明るさや色、被写体の質感などを調整していますが、背景ぼけの追加・強調など、背景のボケ方を変える加工は行っていません。
F5.6とF8を比べても、思ったほど大きな違いは見えなかった
撮影前は、F5.6とF8の違いも確認できればと思っていました。
そこで実際の写真から、55mmと100mmでF5.6とF8を使ったものを見比べています。
ところが、ここは思っていたほど分かりやすい結果にはなりませんでした。
55mmでは、F5.6の写真の方が背景自体は柔らかく見えるものの、人物の頭部と暗い背景が重なっていて、人物が強く目立っているとは言い切れません。
F8の写真では背景の構造が比較的残っている一方、顔の周囲が単純になっていて、輪郭はこちらの方が捉えやすく感じます。
100mmでも、F5.6とF8のどちらでも人物と背景が分かれて見える写真になっていました。
ただし、撮影距離や顔の明るさ、背景との重なり方なども違います。
そのため、
「F5.6だから人物が目立った」
あるいは、
「F8だから背景が残った」
と、F値だけを理由にすることはできませんでした。
今回は撮影距離や構図まで揃えた比較ではないので、あくまで参考比較です。
撮影実験なら、カメラや被写体を固定してF値だけを変えることもできます。
実際の人物撮影では、人も自分も動きますし、背景も光も変わります。
ここが、撮影実験と実戦の大きな違いでした。
焦点距離は「どう撮りたいか」から決めていた
F5.6とF8を比較していて、それ以上に気になったのが焦点距離でした。
F8で撮影した写真でも、55mmでは背景の輪郭や構造が比較的強く残り、人物と周囲の環境とのつながりが見えます。
一方、100mmでは背景が柔らかくなり、人物と背景が分かれて見える方向に変わっていました。
もちろん、撮影距離などの条件も違うため、焦点距離だけが原因だとは言えません。
それでも今回確認した作例では、F5.6とF8の違いよりも、55mmと100mmの違いの方が人物と背景の見え方に強く表れていました。
そして実際の撮影では、焦点距離を先に決めていたわけではありません。
囲み撮影なので、まず自分が立てる場所があります。
そこから、
「人物をどこまで画面に入れたいか」
「背景をどこまで見せたいか」
を考えて、その結果として焦点距離を選んでいました。
背景が大きく開けているなら、少し長めの焦点距離を使う。
後ろにあるオブジェクトも写真に残したいなら、55mmくらいまで広げる。
実際のデータでも、55〜99mmが3,131枚で全体の51.6%。135mm未満まで広げると4,830枚で79.6%を占めています。
200〜250mmは4.1%しかありません。
55-250mmを持っていたからといって望遠側を積極的に使うのではなく、その場でどこまで写したいのかに合わせて焦点距離を選んだ結果、55〜134mmにかなり集中したようです。
撮影前に考えていた「焦点距離によって構図を変える」というイメージとは、少し順番が違いました。
実際には、構図を考えた結果として焦点距離を選ぶことの方が多かったです。
背景を残したいならF8、というほど単純でもなかった
背景をある程度見せたい場面では、F8まで絞ることも考えていました。
ところが、人物の近くにオブジェクトや植え込みがある写真をF5.6とF8で確認すると、F5.6でも人物と周囲の環境とのつながりは十分に残っていました。
F8にしたことで、明確に背景との一体感が増したとまでは確認できません。
今回の作例だけを見るなら、
「背景も見せたいからF8まで絞る」
と決めてしまう必要はなさそうです。
人物と背景との距離だけでなく、人物とオブジェクトの位置関係や画面内での配置も写真の見え方に関わっていました。
今回の作例を見る限り、背景をどこまで残すかはF値だけで決めるのではなく、背景距離や焦点距離、構図まで一緒に考える必要がありそうです。
背景との距離を変えたときのボケ方については、こちらの記事で比較しています。
実際の人物撮影では、背景距離を自由には変えられなかった
今回、撮影実験と実際の人物撮影で大きく違ったのがここです。
撮影実験なら、
「背景をもっと遠くしてみよう」
と条件を変えられます。
でも今回のような囲み撮影では、複数のカメラマンがいます。
自分だけが自由に移動したり、被写体と背景との距離を変えたりすることは難しい場面が多くありました。
そのため実際にやっていたのは、
背景との距離を自分で作ることではなく、今ある背景を見て撮り方を変えること
でした。
後ろが大きく開けているなら、少し長めの焦点距離を使ってみる。
面白いオブジェクトが後ろにあるなら、55mmで背景を残してみる。
背景まで距離があるなら、F8を試してみる。
そんな判断です。
撮影実験では「条件を変える」ことができましたが、実際の人物撮影では「今ある条件を読む」ことになりました。
しかも当日はかなり強い雨でした。
事前に作った撮影計画を細かく思い出しながら撮影するほどの余裕はなく、撮ること自体で頭がいっぱいになる時間も多くありました。
それでも、
「ここならF8を試してみよう」
と思えた場面はありました。
撮影実験と同じ条件を現場で再現できたわけではありません。
むしろ今回分かったのは、撮影実験で覚えたことを、目の前の条件を見て撮り方を考えるための材料として使えるということでした。
雨天ではF値だけを考えているわけにもいかなかった
実際の撮影では、背景だけでなく光量も考える必要がありました。
今回のシャッタースピードは1/500秒が全体の83.4%です。
一方、ISO1000以上で撮った写真は全体の51.6%。ISO3200以上も22.6%ありました。
当日は雨天・曇天だったため、F5.6+1/500秒を基本にすると、Auto ISOによってISO感度が上がる場面も多くなりました。
後半にはシャッタースピードを1/250秒まで落としています。
ただし今回は、ISOが高くなったことや1/250秒へ変更したこと自体の良し悪しを検証する記事ではありません。
ここで重要なのは、背景の見え方だけを考えて自由にF値を決められるわけではなかったことです。
F値を変えると写真の明るさにも影響するため、背景の見え方だけでなく、ISO感度やシャッタースピードとの兼ね合いも考える必要がありました。
これも、条件を揃えて試せる撮影実験と、実際の人物撮影との違いでした。
今回の実践で分かったこと
撮影前には、F5.6を基本にしながら、背景との距離や焦点距離を見てF8も使ってみようと考えていました。
実際にはF5.6が90.3%、F8が9.6%。
写真を見比べてみると、背景まで距離がある場面ではF8でも人物と背景を分離できました。一方で、背景を残したい場面でもF5.6で十分だった写真があります。
そして今回確認した作例では、F5.6とF8の差以上に、焦点距離や背景との位置関係の違いが人物の見え方に表れていました。
もちろん、これは今回の機材と撮影環境、確認した作例での結果です。
撮影距離や構図、光まで揃えた比較ではないので、人物撮影全般に当てはまる結論にはできません。
今回、自分にとって一番大きかったのは、撮影実験で確認してきたことを実際の現場でどう使うのかが少し見えてきたことでした。
今ある背景を見て、何を残したいのかを考え、その場で焦点距離やF値を選ぶ。
撮影実験で覚えたことは、「この設定なら正解」という答えではなく、その判断をするための材料になる。
今回の人物撮影では、そこまで持っていくことができました。
次は前回のキンマーと比べてみる
今回は、9月29日の撮影前に考えていたことを、実際の人物撮影でどこまで使えたのかという視点で振り返りました。
では、前回のキンマーで撮った写真と比べると、実際に何か変わったのでしょうか。
そこについては、今回の記事ではまだ結論を出しません。
次回は前回の撮影と今回の撮影を比べながら、改めて振り返ってみる予定です。
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