これまで「おたふぉと。」の撮影実験では、F値や焦点距離を変えたときに、写真の見え方がどう変わるのかを試してきました。
F値を変えたときは、他の条件が同じなら、F値を小さくするほど背景がぼけやすくなることを確認しました。
撮影実験記事 : F値を変えると背景のボケ方はどう変わる?実際に撮り比べてみた
一方で、背景をぼかす方法を調べていると、F値だけではなく、
「被写体と背景の距離を離す」
ことも大事らしい。
では、カメラの設定を変えずに、背景までの距離だけを変えたら、実際にはどれくらい違って見えるのでしょうか。
今回はアクリルスタンドを被写体にして、背景役のギターを少しずつ後ろへ動かしながら撮り比べてみます。
今回試したいこと
今回変えるのは、アクリルスタンドからギターまでの距離だけです。
この記事では、アクリルスタンドのピントを合わせた面から、背景役として動かすギターまでの距離を「背景距離」とします。
カメラとアクリルスタンドの位置は固定。
焦点距離、F値、シャッタースピード、ISO感度もすべて固定しました。
背景として使ったギターはギタースタンドごと移動させ、
- 30cm
- 50cm
- 75cm
- 100cm
の4段階で撮影します。
なお、写真のさらに奥に写っている本棚は動かしていません。
今回ボケ方の変化を見る対象は、あくまで前後に動かしたギターです。
今回の撮影条件
今回使用したのはCanon EOS Kiss X7と、EF-S55-250mm F4-5.6 IS STM。
焦点距離はズームレンズの広角端である55mmに固定しました。
カメラとアクリルスタンドの距離は約90cmです。
| 項目 | 撮影条件 |
|---|---|
| カメラ | Canon EOS Kiss X7 |
| レンズ | EF-S55-250mm F4-5.6 IS STM |
| 焦点距離 | 55mm |
| F値 | F5.6 |
| シャッタースピード | 1.5秒 |
| ISO感度 | ISO100固定 |
| カメラ〜被写体 | 約90cm |
| 背景距離 | 30 / 50 / 75 / 100cm |
| 被写体 | アクリルスタンド |
| 背景役 | ギター+ギタースタンド |
| 記録形式 | RAW+JPEG |
| 今回の比較 | JPEG撮って出し |
今回はシャッタースピードが1.5秒とかなり遅いため、カメラは安定した台の上に置いて撮影しています。
被写体も動かないので、今回の実験では速いシャッタースピードにする必要はありません。
また、最初にアクリルスタンドへピントを合わせたあと、ピント位置が途中で変わらないように固定して撮影しています。
背景距離30cm
まずは、アクリルスタンドとギターの距離を30cmにしました。

ギターはすでにピント面から外れているためぼけていますが、それでも輪郭はかなりはっきりしています。
特にブリッジや白いブリッジピン、ボディの形などは簡単に認識できます。
「背景はぼけているけれど、背景に何があるのかはかなり分かる」という状態です。
背景距離50cm
次は50cmまで離してみます。

30cmの写真と比べると、ギターの細部が少し曖昧になったように見えます。
ギターそのものはもちろん認識できますが、ブリッジ周辺などの細かな形は30cmのときより追いにくくなりました。
20cmの差でも、並べて見るとギターの細部の見え方に変化が出ていることが分かります。
背景距離75cm
さらに背景を75cmまで離します。

ここまで離すと、ギターだということ自体はすぐ分かりますが、背景の細かな情報はかなり弱くなってきました。
サウンドホールや黒いピックガードなど大きな形は残っていますが、背景としてはかなり柔らかく見えます。
その分、手前のアクリルスタンドの方へ視線が向きやすくなったように感じます。
背景距離100cm
最後は100cmです。
今回の部屋では、これ以上後ろへ下げると家具にぶつかってしまうため、100cmを最大にしました。

30cmの写真と比べると、ギターの輪郭や細かな部分はかなり柔らかくなりました。
もちろんギターであることは分かりますが、背景の情報として細部を見るというよりも、大きな色や形として認識する印象に近づいています。
F値は30cmの写真とまったく同じF5.6です。
それでも背景との距離だけで、ここまで見え方が変わりました。
4枚を並べて比較してみる
個別に見るより、4枚を並べた方が違いは分かりやすくなります。

30cmから50cmの段階でも、ギターの細部の見え方に変化があります。
そこから75cm、100cmと離すにつれて、ギターの細かな情報が少しずつ分かりにくくなっていきました。
今回試してみて面白かったのは、
「背景をかなり遠くまで離さないと意味がない」というわけではなかったこと。
少なくとも今回の55mm・F5.6・カメラから被写体まで約90cmという条件では、30cmから50cmへ離しただけでも変化を確認できました。
背景を離すほどギターは柔らかく見えていきましたが、見た目の変化の大きさは区間ごとに同じではありませんでした。
なお、さらに奥に写っている本棚は4枚とも同じ位置です。
今回前後に動かしたのはギターだけなので、本棚はボケ比較の対象にはしていません。
背景を離すと「ぼける」だけではなかった
今回の写真を見比べていて、もう一つ気づいたことがあります。
ギターをアクリルスタンドから離すほど、ギター自体も写真の中で小さくなっています。
今回の写真では、ギターを後ろへ動かすことで、ボケが大きくなるだけでなく、ギターそのものも小さく写りました。
その両方が重なって、アクリルスタンドの方へ視線が向きやすくなったように感じます。
今回のような実験では「ボケの量」だけを見るつもりでしたが、実際の写真では、背景の大きさまで含めて見え方が変わることが分かりました。
人物撮影ではどう使えそうか
今回の実験で確認できたのは、背景をぼかしたいときはF値だけを見る必要はないということです。
F値はF5.6のまま。
焦点距離も55mmのまま。
それでも被写体と背景の距離を30cmから100cmまで変えるだけで、背景の見え方にはかなり違いが出ました。
撮影会などで人物を撮るときにも、この考え方は使えそうです。
たとえばモデルのすぐ後ろに壁や木、看板などがある場合。
そのまま撮るよりも、可能であれば少し背景から離れてもらうことで、同じカメラ設定でも背景を柔らかくできる可能性があります。
もちろん実際の撮影会では、自由に立ち位置を変えられないこともあります。
それでも、
「背景をぼかしたいなら、F値だけではなくモデルと背景の距離も見る」
という考え方を持っているだけでも、撮影場所を選ぶ基準が一つ増えそうです。
焦点距離によって写真の見え方が変わることも、以前の実験で確認しています。
撮影実験記事 : 焦点距離を変えると写真の見え方はどう変わる?撮り比べた結果はこちら
これまでF値や焦点距離を一つずつ試してきましたが、今回の実験まで含めて考えると、実際の撮影ではそれぞれが別々ではなく、組み合わさって写真の見え方を作っているようです。
まだ一度に全部を考えるのは難しいので、まずは今回覚えた**「被写体と背景の距離」**を、次に人物を撮るときに意識してみたいと思います。
今回分かったこと
今回は55mm・F5.6という設定を変えず、ギターまでの距離だけを30cmから100cmまで動かしてみました。
実際に並べてみると、背景を離すにつれてギターの細部が少しずつ分かりにくくなり、30cmと100cmではかなり印象が変わりました。
しかも変わったのはボケだけではなく、ギター自体も小さく写っています。
これまで背景をぼかすというと、まずF値のことを考えていました。
今回の実験で、「被写体を背景から離す」ことも、背景の見え方を変える方法の一つだと実感できました。
次に撮影会へ行ったときは、設定だけでなく、モデルと背景の位置関係も見てみたいところです。
次は逆に「背景まで見せる」を試す
今回は背景をぼかす方向を試しました。
次は逆に、近所を歩きながら、手前から奥までなるべく見える**「パンフォーカスっぽい」撮り方**を試してみます。
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